日本でのサードプレイス
ビジネスパーソンをはじめ、現代社会において都市で生活している人にとって重要な存在として近年注目を集めているサードプレイスですが、実は十数年前の日本には、このサードプレイスの役割を担う場所がすでに存在していたことを知っていましたか。
井戸での集会

「井戸端会議」という言葉が示しているように、水道がまだ整備されていない頃の日本は井戸水をくんで生活用水として利用していました。
住民が定期的に集まる井戸周辺は、徒歩で気軽にアクセスしやすく、会話による情報交換や交流などが行いやすい代表的なサードプレイスでした。
地域の交流

長屋暮らしでは、隣近所との付き合い方が重要であり、自然と地域の人々と交流を行うことができました。
会議以外にも定期的に公民館などの施設に集まることで、食事や飲食を楽しむような雰囲気もありました。
公衆浴場

公衆浴場では、番台や常連などとリラックスした会話をしやすい雰囲気があり、新しく来た人を迎え入れる環境もありました。
自宅に近い場所にあるためアクセスもしやすく、入浴によってリラックスできるため過ごしやすさもあったのです。
サードプレイスがなくなりつつある日本
これまで日本ではサードプレイスが至るところに存在し、地域住民に愛される交流の場所でした。サードプレイスを必要としていたのは、外で働く人だけではなく、家事や育児を家で行う女性にとっても、情報共有やふと日常から離れる場所として、とても重要な存在だったのです。
しかし現在の日本では、サードプレイスがなくなりつつあります。それはなぜなのでしょうか。
核家族化の進行

高度成長期には、マンションなどの集合住宅が建設されるようになり、様々なインフラが整ったことで井戸端会議などの文化が消えてしまいました。
少子化などの影響で、子どもであっても個室で過ごすことが当たり前になった現在では、同居している家族とも会話が少ないという人も少なくはないかもしれません。
若者の都市部への移住

地方に住んでいる若者たちは、仕事を求めて都市部へと移住することがあります。それまでの文化や人間関係から離れて、新しい土地へと向かうことにより、今までとは大きく異なる環境に向き合わなければなりません。
仕事関係しか知り合いがいない、心安らげる場所がないなど、人はたくさんいるにもかかわらず、孤立を感じることが多くなる都市部での生活にこそサードプレイスは必要ですが、人間関係が希薄になりやすい都市での地域交流の機会は減少傾向にあります。
公衆浴場の減少

厚生労働省の「衛生行政報告例」では、一般的な公衆浴場は平成20年度には5,722施設あったのが、10年後の平成30年度には3,535施設まで減少しています。
自宅にお風呂があるのはもはや当然で、外でのお風呂といえばスーパー銭湯のような大規模なレジャー施設として集約される傾向にある現代では、これからも地域性のある小さな公衆浴場の減少を止めるのは難しくなっています。徒歩で気軽に行ける場所にある公衆銭湯の文化はなくなりつつあるのです。
このように、日本に存在していたサードプレイスとしての機能を果たしていた心安らぐ場所、地域交流の場所は、都市化や核家族化の影響により次第に失われつつあります。
そこで、今注目されているのがサウナです。次のセクションでは、サウナが果たすサードプレイスとしての役割について学習していきましょう。